
ダヴィンチ・ヴァイオリン(以下ダ)と省略) 先生、今日はありがとうございます。いきなりですが、スズキメソードの指導者になられたきっかけと先生の指導法についてお話いただけますか?
板) 私は以前、東京フィルハーモニー交響楽団で演奏していました。その時、鈴木先生のことは代表的な著作「愛に生きる」(講談社現代新書)しか知らなかったのです。ある日先輩が「鈴木鎮一先生に会ってみないか?」ということでお会いしたのです。それが衝撃的な出会いでした。「聴かせてください」といって弾いてくださったのが確か「ベートーヴェン」のヴァイオリン協奏曲だったと思いますが、先生が出す開放弦の音、それが昔の演奏家で言えばチェロのカザルス、ヴァイオリンのグリュミオーなど、ああいう時代の純粋な音だった。先生は私が会った時には70位だと思うので、テクニックというよりも音が純粋で本来あるべき楽器の音だと感じたのです。無駄のない、脱力した状態で音を出していたのです。
その音を聞いたのがきっかけで東京フィルハーモニーを辞めました。オーケストラだと自分の思っている感性の音が出せないときがあります。当時、自分の音がだんだん貧しくなっていったのでしょう。それが鈴木先生に出会って気がついたのです。私は鈴木先生から曲を教わったのではなく、「音」そのものを学びました。
私の指導モットーは「一つの今のレベルよりもあった時に1つ上げること」です。いままで何十年と常にこの考え方で生徒さんを指導してきました。そのレベルを上げるために私が生徒に求めているものは「常に対話」です。あることに対して「どう思う」のかを聞きます。指導者が「ここは、こうだよ」と話したらそれで終わりです。聞いていればいいのですから。しかし、音楽はあくまでその人がイメージしたものを弾いた方が聴き手は感動します。先ほど述べたチェロのカザルスとかヴァイオリンならグリュミオーも、楽譜から読み取って自己表現していったわけですし、それが演奏者の本来あるべき姿だと思うのです。だから生徒さんたちと対話をしてその子なりの考えを聞きます。そして一緒になってそのフレーズに合ったものを想像しそれを音にする、そこが私の指導の中心です。
2) 一番大事な生徒さんの「意欲」作り
板) まずは対話。そこから始まる。対話を通して子供との信頼関係を作ります。それも言葉だけではなくて目、鼻、皮膚など私のすべて五感を通した対話です。すると生徒が私の五感を感じるのです。言い換えると私の情熱です。もちろん伝えることは簡単ではないけれども子供たちに私の情熱がきちんと伝わることで、その子のやる気を起こさせる、発奮させる種になってくるのです。
そして私は種が出てくるまで根気強く諦めないで続けます。指導者にとって諦めないことはすごく大事です。こちらが諦めて投げてしまわないで、出来ない人にも「できる」ということを教えてあげます。それはテクニックではなく「気」ですね。「気」がいかにその子なりの前向きの姿勢に変えていけるか。与えられたものしか表現できないというのはまさしく気がない状態だと思います。

パガニーニ「カプリース第22番」を弾く生徒さん(中1) ラロ「スペイン交響曲」第1楽章を弾く生徒さん(中2)
3) 感情表現が豊かでないお子様の場合
ダ) 先生のお話の中で、対話を通して子供の感性を育てる、指導者として決してあきらめない、そういう情熱的なご指導をお願いするにあたって、普段の日常の生活の中でこんなことを意識してほしいとか、聴かせていただけたらと思います。
板) ご家庭でも、まずは頭ごなしに子供に「ああしろ」「こうしろ」と言うのではなくて、常にものに対して「あなたどう考えるの?」と聞いてあげられる、余裕、間を持ってほしいと思います。子供に考えさせる。常に人間は物事を選択していますね。例えば、子供が喧嘩した場合でも頭ごなしに「いけない」と言わずに、色々なことを子供に選択させる余地を与えることですね。それは「いけないこと」をした子供にはそれをした理由があるからです。心を育てるというのはまさにこの考えを選択することにあります。そのためには子供に我慢させなければならないこともあります。親御さんには, ①私はあなたを信頼している、②あなたはちゃんと取り組めると思う、③私はあなたの言葉を聴いている、④あなたは大事にされている、⑤あなたは私にとってとても大切な存在、という方向で言葉を発してもらえたらいいと思います。
5)息子様はプロのヴァイオリニストに へ
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