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バイオリン・弓選び『実況中継』A

愛知県の蒲郡からお越しいただいた久田さん親子(平成21年6月)



<実際のバイオリン選び>
    今回は久田さんのご予算の範囲内に納まるように8本ご用意しました。フランス製6本、ドイツ製2本です。


実は、バイオリン選びをする時には「どんな楽器が良いのか」
「自分が具体的にどんな音が欲しいのか」分からない方がとても多いですね。

でもそれで良いのです。

今回の久田さんの場合でも、お母様ご自身「分からない」というお話でした。
基準があいまいな状態ですので、まずは自分が「良い」「好き」というところから始めます。
そこで息子さんご本人に1台ずつ弾いていただき、それぞれのバイオリンの音の特徴を確認してもらい感想を聞きます。

(ハイドン「バイオリン協奏曲」、バッハ「無伴奏パルティータ」などを弾きながら)
「これ、弾きやすい!」「ん〜、弾きにくいかなあ」「この音、好き!」「ちょっと、違うかな」「音が大きい」「なんか・・・」「これ、良く響く!」など感想がでてきます。

お母さんも「あたし、その音好き!」「あれ、さっきのとぜんぜん音が違う」「高音はいい」「音が柔らかくていい」・・・など、息子さんよりも楽しそうですね。

さらに「ねえ、○○弾いてよ?」「ちょっと音程違うんじゃない?」「もっと弾いて!」などお母さんのリクエストに応える息子さんも大変そうです。
1台ごと音と好みを確認しながら、バイオリンを選別(消去)していきます。この間、私は質問されない限り楽器の説明はしません。まずは弾いて欲しいからです。

この間、約1時間ほど弾いたでしょうか、3台まで絞れました。
でも、「これもいいし」「こっちも良い」「ん〜、よく分からない」健人くん、眠そうです。
今日はいつもより早い朝5時起きですから。

そこで、すかさずお母さん「ねえ、もうちょっと弾いてよ、お願い?」と促しています。
そしてやっと1台まで絞れました!

「これがいい」と息子さん。確かによく響いています。決して悪いバイオリンではありません。
これで決まり!でしょうか?

「ねえ、健人くん。本当にこのバイオリンが一番気に入った?」私はしつこく確認します。そうすると「ん〜、やっぱりこっちもいい」「じゃあ、今度はこういう風に弾いてみてくれるかな?」私が実際にあるバイオリンを弾いてみます。そして同じバイオリンで違う種類の音を出してみます。

「あっ、全然違う音がする!」
例えば、先ほど試奏したときよりも、もっと極端に、また弓の先、元など、曲ではなく開放弦も弾いてもらいます。
するとどうでしょう。
「やっぱり、こっちが良い」と当初1台に絞って選んだバイオリンではありませんでした。
「あっ、私の第1印象の良いバイオリンだわ」とお母さん。
さすが息子さんの音を毎日聞いているだけあって息子さんのよく特徴を捉えているようです。結局、フランス製のオールドになりました。芯のあるしっかりとした音が出ています。今度はお二人とも納得しているようです。
このように、楽器選びには

(前提) 自分が求める音の基準が実は「あいまい」なため

(第1段階) 何台か弾いていくと徐々に自分なりの音の「良し悪し」「好み」がはっきりしていく
    → 「基準」が少しずつ出来てきます

(第2段階) 楽器の選別をしながら更に弾き続けると、どれが良いか分からない、迷ってしまう
    → 好みの音の出る楽器の中で「区別」が付かない状態に

(第3段階) もっと本質的な音を出す弾き方で演奏
    → そのバイオリン本来の音を引き出す。音の好みが「はっきり」してくる。


楽器屋さんとして、バイオリン選びにお付き合いしていますと、このようなプロセスを経て楽器を決定していくことも多々あります。大人でも楽器屋さんという慣れない場所で弾くのに躊躇してしまいがちです。様子を見ながら「傷つけないように」とかなかなか思い切って弾けないのです。そうするといつもと違い萎縮した音の出し方となりバイオリン本来の持つ音が出ていないことがあるのです。

そういう時は曲を弾くことよりも開放弦や音階、和音など、また弓の場所を気にしながら弾かれることをオススメします。

分数の場合ですと躊躇しているように聞こえる理由としては、大きい楽器と弓に慣れていないことが考えられます。今、試奏で弾いているバイオリンは普段弾いているバイオリンより大きいのです。

弓も長くなっています。そうすると弓を使う場所(元、真ん中、先)の感覚が違います。
また、バイオリン本体が大きくなっているので、弓を弦に置く場所も変わってきます。

バイオリンを選びましたので、今度は弓選びに入ります。


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